# Laplace変換の定義と例

定義

を、 実数 に対して定義された関数とする。 を複素数とする。このとき、Laplace変換 を、

で定める。

関数 のLaplace変換を、対応する大文字 で表すことにする。また、 のことを とか のように表す記法も用いる。

の実部を , 虚部を と書くことにする。すなわち、

と書くことにする。すると、Eulerの公式 より、

を得る。

定数関数 のLaplace変換を計算する。 を複素数として、

を計算すればよい。

最後の式の実部と虚部をそれぞれ計算すると、次のようになる。まず、不定積分は

である。 とすると、 なら両方とも に収束する。 また、を代入すると、それぞれ , となる。

以上により、元の積分は のときに収束して、

を得る。

上のように実部と虚部を分けなくても、複素数値の関数として

であることを用いると、

と計算することができる。ただし、 で収束するのは のときなので、この計算がちゃんとできるのも のときである。( のときは本当は別の計算をすることになると思うが、いずれにせよ収束しない。)

なにかのLaplace変換を計算したいときは、このように複素数値の関数として計算したほうが楽なこともありそうである。また、インターネットで適当に検索するとLaplace変換の表がたくさん出てくるので、それを活用するのもよさそう。 (ちなみに私はさっきの の計算をWolfram alphaに投げました…)

せっかくなので、Laplace変換表を見ながらいくつか計算してみる。

のLaplace変換は、 である。

計算

まず、 を複素数として、

を計算すればよい。一回部分積分すると、

を得る。最後の積分はさっき計算していたので、それを代入すると、 とわかる。

数学屋さん向けの注意

ここまで が属するクラスをちゃんと書いていなかったが、積分を定義したいので、単に「関数」といったら「 上のLebesgue可測な関数」を考えることにする。

Laplace変換は、微分方程式を解くために広く使われている。その主な理由のひとつ として、Laplace変換を用いると微分演算子を多項式に変換することができるからである。これはFourier変換と同様の性質である。

Laplace変換がFourier変換と比べて有利な点として、Laplace変換は関数の増大度が指数増大でも適用可能である、という点が挙げられる。 常微分方程式の解は、例えば の解が となるように、指数増大することが多い。Fourier変換は指数増大する関数に対しては(少なくとも普通の定義では)積分が発散してしまうが、Laplace変換は指数減衰する関数()を掛けてからFourier変換する()という形になっているので、十分大きく をとることで積分が収束しやすくなっているのである。

ここではLaplace変換の定義として 上での積分を考えたが、 上での積分を考えることもあるようである。区別したいときは 、前者のものを片側Laplace変換、後者のものを両側Laplace変換と呼ぶ。