# Vitaliの被覆定理
測度論とかに出てくる定理だが、久々に証明を読んだら面白かったのでメモ。
定理(無限バージョン)
- 選ばれた球は、どのふたつも交わらない。すなわち、
のとき、 である。 - 選ばれた球の半径を
倍すると、もともと与えられた球をすべて覆うことができる。すなわち、
が成り立つ。
一見なんだかよく分からないが、とりあえず
- 与えられた2つの球が交わらないとき:このときは、
とすればよい。 - 与えられた2つの球が交わっているとき:このときは、高々一方の球しか選ぶことができない。そこで覆いやすいほうがどちらかを検討してみると、半径の大きいものを選んだほうがよさそうである。
- ここでちょっと考えると、大きいほうの球を
倍すると、もう一方の球がすっぽり含まれることがわかる。さらによく考えると、この状況であれば 倍する必要はなく、 倍で済むこともわかる。
- ここでちょっと考えると、大きいほうの球を
実は、与えられた球が有限個であれば次が成り立つ:
定理(有限バージョン)
- 選ばれた球は、どのふたつも交わらない。すなわち、
のとき、 である。 - 選ばれた球の半径を
倍 すると、もともと与えられた球をすべて覆うことができる。すなわち、
が成り立つ。
有限個だと
まずは有限バージョンの証明を紹介する。
定理(有限バージョン)の証明
与えられた有限個の球を半径の大きいものから順に並べておく。このとき、列の初め(半径の大きいもの)から見ていって、いままでに選んだどの球ともdisjointであれば選び、そうでなければ選ばないようにする。このようにして選ばれた添え字の集合を
最初に与えられた球のうちのひとつ
であれば、当然 である。 とする。このとき、 であって、 かつ であるものが存在する。- 選ばれなかったのだから、それより前に選んだ球と交わっているはずである。
を固定する。このとき、任意の に対して、
- なので、
である。
したがって、任意の
このように、競プロなどでよく見かける「貪欲法」がうまく適用できるわけである。
球が無限個のときは、「半径が最大の球」は存在するとは限らないので、選び方を少し工夫する必要がある。仮定より、与えられた球の半径はすべて
定理(無限バージョン)の証明
次のように順次球を選んでいく。
(1) 半径が
- 互いに交わらないようにできるだけたくさん取ると言っている。極大なものが存在するのはZornの補題による。
(2) 半径が
- 分かりにくくなってしまったが、(1)と(2)で選んだものたちが互いに交わらないようにたくさん取ると言っている。
(3) 半径が
以下同様に繰り返す。この操作の中で選ばれた球の添え字の集合を
最初に与えられた球のうちのひとつ
であれば、 である。 であるとする。先ほどの操作のうち、半径 の球が当てはまる段階が であったとする。 このとき、その段階における構成から、ある であって、 かつ となるものが存在する。 を固定する。 であることを示そう。 を任意にとる。このとき、 も も に含まれるので、 が成り立つことに注意すると、 だから、 である。これでok。
無限個のときもおおまかには貪欲法のようなことをしているが、「大きい順」に並べることが不可能なので、代わりに半径
ステップごとの刻む幅を
一方、無限バージョンで「
例 (Stack Exchange (opens new window)で紹介されている例)
を考えると、以下のことがわかる:
に属する区間のunionは である。(最終的にこれを覆わなくてはいけない) に属する区間はすべて を含む。- 特に、
から互いに交わらないようにいくつかの区間を選ぼうとすると、高々ひとつしか選ぶことができない。
- 特に、
しかし、
なぜこの例では